それは2020年3月のこと。
奴はある日突然現れた。
いや、実際はもっととっくの前に現れていたのだ。
私は奴の存在を感じていた。
にも関わらず、「見て見ぬふり」をしていたのだ。
体重計に乗らなくなって何カ月だっただろうか。
一度乗るのをやめたら、次に乗る勇気が湧かない。
そりゃそうだ。
鏡に映った自分の姿を見れば一目瞭然だ。
私は太った。
とてつもなく太った。
このままではいけない。
私は決意した。
おもむろに体重計に乗っかり息をのんだ。
68.6㎏
生まれて数十年で初めて見る数字だ。
私はついに限界突破してしまった。
このままではいけない。
己のありのままを認めなければ改善は難しい。
どれだけわがままな食生活を送ってきたか。
成果は十分に出ている。
そして私はもう一度鏡を見た。
目をそらさず、全身をくまなく見た。
そして背中に奴の存在を認めたのだ。
背中で行き場を失い盛り上がった「ぜい肉」を。
それはまるで第二のオッパイだった。
奴の存在は私に大きな衝撃を与えた。
こんなだらしない体になっていたなんて。
このままではいけない。
そして私は決意した。
ダイエットをするぞ、と。
「サラバ、背中のオッパイ。」
こう言える日まで。
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